ダイヤモンドの硬度を超えるダイヤモンド

ダイヤモンドの硬度を超えるダイヤモンド

  • お盆をどのようにお過ごしでしたでしょうか。オフィス・宮島です。本日はニコニコニュースに面白い記事があったので、それについて紹介いたします。

阪大など、ダイヤモンドの硬度を超える人工ダイヤモンドの合成に成功

大阪大学(阪大)は8月12日、住友電気工業(住友電工)との共同研究により、高温・高圧の特殊な条件下において、「双晶」という欠陥を大量に導入して合成した「ナノ双晶多結晶ダイヤモンド」が、通常のダイヤモンドよりも強い原子間結合力を有することを発見したと発表した。

成果は、阪大大学院 基礎工学研究科の谷垣健一助教、同・荻博次准教授、同・草部浩一准教授、住友電工の角谷均博士(阪大客員教授)らの共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、8月12日付けで英科学誌「Nature Communications」に掲載された。

物質は、それを構成している原子が、おびただしい数のバネによって3次元的につながれてできている。原子と原子をつなぐバネの原子間結合力、つまり「原子間結合力」が大きいほど、その物質の結合力は大きく、変形しにくくなる。要は硬くなるというわけだ。

そして最も高い原子間結合力を持つ物質が、いわずと知れたダイヤモンドだ。この高い原子間結合力のおかげで、極めて高い融点、熱伝導率、硬度が実現されているのである。引っ張り強度に限った話であれば、同じ炭素系のカーボンナノチューブがダイヤモンド以上であり、それまでは実現不可能とされてきた軌道(宇宙)エレベーターのケーブルへの利用が理論上は可能になったとされている。しかし、ダイヤモンドを超える原子間結合力を持つ物質は世界中で長い間探究されてきたが、実験的には1つとしてその例は見出されていなかった。

今回研究チームは、高温・高圧下において、グラファイトからダイヤモンドへ直接変換させてナノ双晶多結晶ダイヤモンドを合成することに成功した。結晶粒径が100nm程度と小さく、また合成条件によって各結晶内に双晶が大量に導入されるという特性を持つ。

そしてナノ双晶多結晶ダイヤモンド中に存在する双晶とは、結晶性物質内において、ある特定の面に対して原子配置が対称な関係にある時、その面の両側の原子配列部分のことをいう。結晶性物質の欠陥の1種であるが、転位や亀裂、空隙などの欠陥とは異なり、大きく原子配列が乱れているわけではないのが特徴だ。

とはいっても欠陥には変わりなく、通常の物質なら欠陥が導入されたら平均的な結合力が低下するために、原子間結合力は小さくなるはずである。ところが今回の研究により、この特殊な欠陥部分の原子間結合力が逆に非常に大きくなることが理論的に見出されたというわけだ。

合成したナノ双晶多結晶ダイヤモンドは、数ミリ角と小さく、通常の方法ではその原子間結合力を測定することができない。最近は、小さい物質の原子間結合力を計測するには、物質を鳴り響かせてその音色を聞き取る、という方法が一般的に用いられている。同じ重さで同じサイズの物質が鳴り響く時、より高い音で鳴り響けばより強いバネで構成されていることがわかるというわけだ。ところが、ナノ双晶多結晶ダイヤモンドは小さく硬いため、正確に形状を整えることが難しく、原子間結合力を従来の手法により計測することができなかったのである。

そこで研究チームは、レーザー光を用いて、直径50μm、奥行き5μm程度の領域だけを鳴り響かせ、同時にその音色を別のレーザー光で正確に「聞き取る」、という技術を開発(画像)。これにより、不定形なナノ双晶多結晶ダイヤモンドの一部だけを鳴り響かせ、正確に原子間結合力を測定することができるようになったというわけだ。鳴り響かせる音の波長は90nmである。これは、可視光の波長(数100nm)よりかなり短い波長だ。測定の結果、通常のダイヤモンドの原子間結合力を確実に超える値が観測されたのである。

今回の成果は、ダイヤモンドの原子間結合力が特殊な欠陥により強化されることを立証したもの、といってもよいものだ。ナノ双晶多結晶ダイヤモンドは、この構造の特徴から、通常のダイヤモンドと異なる新しい人工物質というわけだ。

またダイヤモンドには、双晶以外にも原子配列を大きく乱さない欠陥構造が存在し得るという。今回の発見は、さらに大きく原子間結合力を向上させる欠陥構造の探索という新たな研究分野の起点となるとした。こうした研究は、より高い原子間結合力が要求される「超高周波共振デバイス」の実現につながり、携帯電話などの通信周波数の高周波化、高速化などに貢献することができるとしている。

また、物質の原子間結合力は、その物質の最も重要な性質の1つであり、新たに物質が開発されると必ず必要とされる値だ。携帯電話の通信機フィルタといった多くのデバイスにおいては、それらを構成する物質の原子間結合力が非常に重要な設計パラメータとなっており、この値がなければデバイスの設計を行うことができない。

今後も、さまざまな機能を有する新物質が開発・発見されると予想されるが、それらのほとんどが微小なサイズでしか得られないはずだという。今回の研究において開発された手法は、砂粒であっても正確に原子間結合力を測定することができるため、新規材料の計測において標準的な手法となるものであるといえるとしている。

ダイヤモンドは本当に硬いのか?

  • 皆さん、ダイヤモンドと聞いて最初にイメージするのは「硬い」ということだと思います。このgifアニメを見てほしいのですが、何か気づくことがあると思います。

ダイヤモンドの結晶構造

  • ある面では非常に炭素原子が密に詰まっているがある面ではスカスカであることがわかると思います。密に詰まっている部分では非常に硬いのですがスカスカの部分では非常に弱いという性質をダイヤモンドは持っています。
  • そこで、その欠点を補うため「双晶※」と呼ばれる結晶が折れ曲がる欠陥を利用して、スカスカの部分を埋めて硬度を上げています。

ナノ双晶多結晶ダイヤモンド

  • この結果、モース硬度10のダイヤモンドを超える「ダイヤモンド」となるわけです。

※これが双晶です。

水晶の双晶

この現象がナノレベルで生じているということです。

最後に

  • 今回このようなニューズを挙げましたが、このような応用技術が完成されるのは、基礎学力を積み重ねてきた結果です。私の塾生にも基礎を軽んじる考えを持っている学生がおります。基礎が何もない状態でこのようなことを思いつくことは不可能です。
  • 基礎学力を積んだうえで、常にこのようなことを考えていなければ生まれません。これを偶然読んでくれた学生の皆さん、新しいものを作り出すためには基礎が重要であることをしっかり頭に入れておいてください。

本日はここまでといたします。ご清聴ありがとうございました。

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