教育バウチャー(きょういくばうちゃー)
教育バウチャー(きょういくばうちゃー)
- 私立学校など、教育に限定した「クーポン」を家庭に直接配布し、私学への負担軽減を図るとともに、学校選択に幅を持たせて学校間で競争を行わせることにより、教育の質を上げるというもの。
教育バウチャー制度を支持する人の主張
- バウチャーの受け入れにより、私立学校は生徒の受け入れ人数により補助金額が決定される。
- それにより、より多くの生徒を集めることができるので、教育の質が向上するのではないかと考えている。
- また、バウチャーの金額を公立校の授業料に近づけることにより、私立・公立の金額面で対等になるので競争が促され、教育の質が向上するのではないかと考えている。
- 公立校の運営費もバウチャーから捻出することによって、公的教育財政を変えることができる。
教育バウチャー制度に反対する人の主張
- 学校の序列が固定されてしまう。
- 富裕層が上位校の近くに引っ越し、その土地の価格が暴騰する。
- 上位校(人気校)は固定化し、人気校ほど学力テストの平均点が高く、下位佼(不人気校)ほど学力平均点が低くなる。
- また、上位校は一等地で交通の便が非常によいところにできるのに対し、下位佼は交通の便が悪い場所か、環境の悪い場所にできる。
- 階層が固定されてしまう。
- 低所得者層が上位校に入る機会が失われ、上位校と下位佼との差が大きくなり教育格差が広がる。
教育バウチャーを実施した結果
イギリス
- 学校格差が地域格差や階層格差を生んでしまった。
- 就学援助率が高いところほど低所得者層である。
- 近年トップの生徒の学力水準は向上したが、教育改革の結果とは言えない。さらに市場化は不平等を推し進めたようだと結論付けた。
アメリカ
- 州によって助成金の上限は異なるが、おおむね学費の75%~90%または貧困基準の185%まで助成する。
- その結果…
- ウィスコンシン州
- ある研究所はバウチャーによって公立から私立に転校した学生は3~4年後に数学力・読解力の向上が認められたと報告した。しかしまったく学力が向上していないという報告も上がっている。
- ある研究所はバウチャーによって公立から私立に転校した学生は3~4年後に数学力・読解力の向上が認められたと報告した。しかしまったく学力が向上していないという報告も上がっている。
- オハイオ州
- 幼稚園から小学校3年生までが対象範囲だったが、高校まで対象範囲を広げた。その結果、公立に比べ社会科・言語について効果が認められたが。数学では逆に公立より下回った。
- この実験は「宗教団体に対する政治補助とみなされ、政教分離に違反する」として訴訟が起こされた。その結果、公平に分配された補助金が宗教関係の学校に使われても問題はないとの判決が出た。これにより、バウチャー推進の追い風になった。
- フロリダ州
- 当時の州知事ジェブ・ブッシュ(ジョージ・W・ブッシュの弟)が1999年から導入した。
- ここでは、バウチャーと情報開示をセットにした政策を実施した。まず、すべての公立校で学力テストを行い、A~Fまでの成績をつける。成績がFを2回つけた生徒は私立に転校する権利が与えらえる。
- その結果、成績がFの生徒の学力が大幅に上がったという報告が上がった。
- ウィスコンシン州
- 研究者によると、アフリカ系アメリカ人(黒人)の成績向上には大きく貢献したが、白人・ヒスパニックにはそれほど影響が出なかった。
- また、バウチャーによる効果は、政策の設計方法に依存することが分かった。
その他の国
- ニュージーランド
- 教育自由化を行った結果、いったん「よい」という評価を受けた学校に生徒が殺到した。そして裕福な白人の家庭の子弟ばかり「よい」という評価を受けた学校に集まり、普通の家庭との教育格差が大きくなってしまった。
- コロンビア
- 世界銀行の支援により、公立の中学校・高校に通う生徒を対象に行った。バウチャーを受けるには貧困家庭に属し、政策に参加する学校の入学許可がなければ得られないが、バウチャーを受けた学生の成績は向上し、高校卒業率や大学進学率が増加した。
- スウェーデン
- 1997年に私立の学費が無料化され(それまでは公立の85%以上の支払いが義務付けられていた)、補助金の額も市町村との交渉で決めることができるようになった。希望者が多ければ学校からの距離と兄弟の在籍の有無を基準として選別を行う。その結果、参加する学校が90校から400校まで増え、私立と公立の学力差もほとんどなかった。
まとめ
- 各国のバウチャー実施結果を読んでみると、全体的に成功しているのはコロンビアとスウェーデンくらいなもので、あとはほとんど失敗といっても過言ではない。
- 成功している事例を見ると、次のような理由からではないかと思う。
- 学校による学力差がほとんどない状態でバウチャーを適用している。(スウェーデン)
- 貧困により学問に触れる機会が与えられないので、本当に学問で身を起こしたい人がバウチャーにより機会が与えられ勉強することができた。(コロンビア)
- 経営者感覚すなわち市場原理を教育に持ち込むと、間違いなく教育格差を生み、階層を固定してしまう。
- 仮に運用するならば、地域とのつながりを考慮したうえで、政策設計をしっかり行わければならない。あくまで私見だが特に次に示す項目を重視しなければならない。
- バウチャーの適用範囲
- 教員の士気の維持および教員の負担の軽減
- 信頼できる制度の評価方法の確立
- インフラの整備(通学バスや通学電車の確保)
- 人気校の選考から漏れた生徒の受け皿の確保
- 学力を保証したうえで、選択できるようにすること
(どの学校を選んでも学力格差がないこと)
- 学力を保証したうえで、選択できるようにすること
- 選考基準の確立(生徒募集)
- 定期的な統一学力テスト
- 教育に市場原理を持ち込まないこと
参考文献 Wikipedia,http://www.kyo-sin.net/voucher.htm
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